急転直下

2008/10/04(土) 16:59:39
事態は、音を立てて動き出した。

もう、わたしには止める事が出来ない。

まるで坂道を転がり落ちる岩の様に、
地響きを轟かせている…。

最初のひと押しをしたのはわたしなのに、
わたしの意図しない勢いで動き始めると、
不安で
不安で
堪らない。

この岩の行く先をコントロールする事が
わたしに出来るだろうか……。




無題

2008/10/04(土) 11:30:16
決意しても
決意しても

時が経って
事態が少しでも動くと

本当にわたしの選択は正しいのか

自問自答を
始めてしまう


わたしは
本当に正しい事を
しようとしているのか


こうまでして
自分を護ろうとする価値が
わたしにあるのか


『生きててくれるだけで
 いいんだよ』

妹は 言う


わたしが精神的に追い込まれると
不思議な事に必ず彼が怪我をする

まるでわたしを支配する暗黒が
彼にもその触手を伸ばそうとするが如く


それでもわたしは
彼の傍にいたいという
自己の欲求を満たしたいが為だけに
取捨選択を繰り返していても
いいのだろうか



わからない




再起

2008/09/29(月) 13:53:25
どんな仕打ちをされても、それがわたしに相応しい罰…。
妻として正常に機能しなかったわたしが受ける、当然の報い…。

そう考えて、耐えてきた。
耐えねばならないと、己に言い聞かせていた。
だからこそ、自分だけを護る為に牙を剥き出して闘う事に、強い躊躇いが、あった。

けれども…。

それらは、ほとんどが、嘘だった。
わたしを意のままにコントロールし、自身の安楽と引き換えにわたしを犠牲にする為の、誠意を装った、嘘だった。

それがはっきりした今、もうわたしは、闘う事を躊躇しない。


そして、これらの嘘が発覚した事で、わたしは少しの自信を持つ。
わたしの、人を見る目や直感力は、そう棄てたものでもない事が判ったから。
これでわたしは、わたしを少しだけ信じる事が出来る。


  お前は、俺の伴走者。
  着いてこられなくなったら置いていく。
  俺は、立ち止まりはしない。


そう言ってくれた彼と、どこまでも一緒に走りたい。
その為には、万難を排除する。

今…漸くわたしは、自分の望む進行方向を、真っ直ぐ見据えながら立ち上がる事が出来たと感じる…。




取捨選択

2008/09/24(水) 11:24:55
離婚によって…根底から崩壊した、わたしの生活の基盤。

自分にとって、何を一番優先させる生活がいいのか…。
熟考しなくてはならない。


独力で暮らしていける住処を手にしたければ…

犬や猫と共に暮らす田舎暮らしを
棄てねばならない。


犬や猫との田舎暮らしを守りたければ…

一人で静かに暮らす事が
出来なくなるかも知れない。



彼の傍で、生きていたい。



この渇望がなければ、
わたしはとっくに
生きる事を放棄していたに
違いない…。




片付け......(1)

2008/09/16(火) 16:25:38
早速彼は、テキパキと動き始めた。
小さめのダンボール箱や紙袋をわたしに用意させ、

  ここにある書類は、全部これに入れるぞ。

とか、

  これには本を入れていく。
  後でまとめて本の部屋に移す。


とか言いながら、その手を休める事は無い。

最初は、彼の周囲をウロウロしていたわたしだが、生理痛がぶり返して来て、呻きながら蹲ってしまった。
そんなわたしの傍らにしゃがみ込み、無造作に髪を掴んで顔を上げさせる。
わたしの苦痛の表情をざっと観察した後、徐に口を開く。

  痛むのか。

  …うん…。

  どんな痛みなんだ?

  …んー…。
  とっても鈍い痛み…。
  例えるなら…んー…。
  …鈍りまくった刃物で…。
  子宮をグリグリ抉られてる様な…。
  そんな感じ…。


  ほう…。

彼の表情に、じわじわと喜悦の色が広がってゆく。
それを見ながらわたしは、本当にこの人は、わたしが苦痛に苛まれるのを見るのが好きなんだなぁ…と、他人事の様に考える。
突然彼は、子どもが興味を失った玩具を放り出す様に、わたしの髪から手を放して立ち上がった。

  もういい。
  お前はそっちでくたばっとけ。


  え…。

彼がわたしに、横になっていても良いと言っているのだと気付くまでに、少し時間がかかった。
苦しむわたしを見る事を愉しむ彼が、わたしに、楽にしていていいなどと言うとは思わなかったのだ。
とは言え、やせ我慢が出来る程の体調ではなかったので、お言葉に甘えて、床の上に横にならせて貰った。


彼が片付ける物音。
彼に着いて回る犬の、せわしい足音。
彼の鼻歌や、犬に話しかける声…。

下腹部を抱え込み、カブトムシの幼虫の様な姿勢で転がったまま、ぼんやりと耳を傾ける。
ふと、目の前に転がっていた本を手に取り、パラパラとめくる。
そのまま、読書に軽く没頭してしまう。


  てめえ。

突然、彼の声が頭上から飛んで来て、頭を踏まれた。

  俺を働かせておきながら、
  てめえは読書たぁいい度胸だなぁ。
  あ?


  ご…ごめんなさいごめんなさい。
  ついつい手持ち無沙汰で…。


満開の笑顔でわたしの頭を踏みにじり、表情を変えぬまま足をどけると、言う。

  …いいなぁ。
  土足で踏める女。
  愉しい。


言われてみると、彼はまだ靴を履いたままだった。

以前のわたしなら、誰かにふざけて足で突かれただけでも、むっとしていた。
それが、彼になら何をされても、不思議なくらい怒りを感じない。
不快感を得ても我慢するのではなく、不快感すら無いのだ。
これが、彼の全てを受け入れるという事なのだろうか…?

  まあいい。
  お前はそうして好きな事して
  くたばってろ。
  俺も好きにやらせてもらう。


機嫌よく言うと、彼は再び片付けに向かった。
彼の後ろを、犬が、弾む様な足取りで着いて行った。