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車中再び

2009/12/26(土) 05:57:15
待ち合わせ場所の駅に着いた。
ここは、駅舎が大きなショッピングセンターに直結しており、併設されている映画館には、わたしも何度か来た事があった。
人の多い場所を忌避し続けていたわたしだったが、この時は、土地勘のある場所というのが、出掛けてくるのに躊躇しない理由となった。
無事にSと落ち合えた後、レストラン街で適当な店に入って、食事をする。
雑談に終始し、本題には入らなかった様な気がする。
食後にコーヒーでも…と思ったら、そのお店には、コーヒーが無かった。
コーヒーを飲める店に移動しよう、と、席を立つ。
会計伝票を、Sが素早く手にした。

  今日はわたしが誘ったんだから、
  わたしに払わせて…?


  いやー。駄目ーw

  そんな…それじゃせめて、割り勘にして…?

  駄目ー。
  いーじゃん、甘えとけってw


  んー…それじゃ、次のコーヒーは、
  わたしに払わせて。


  しょーがねえなぁw
  そんなに奢られんの嫌いかw


  そうじゃなくて…
  誘った方が出すのが当然と考えてるだけ。


  お前、ほんと、真面目だなw
  だから、色々煮詰まるんだぜ。
  もっと軽ぅーく考えろよ。


そんな問答をしながら、喫茶店に場所を移す。
けれど、そこもあまり落ち着ける雰囲気ではなく、本題を切り出す事は出来なかった。

結局、話し始めたのは、近くまで送っていくからと、Sを乗せた車の中でだった。
しかし、初めて走る道を運転しつつ、頭の中を整理しながら喋るのは、シングルタスクなわたしには難しく、話は途切れがちになる。
Sの案内で、車をひとけの無い路上に停める。

  ここなら、少しは落ち着けるだろ。
  話してみな。


  うん…ありがとう。それでね…

わたしは、本格的に話し始めた。
Sは、リクライニング・シートを倒して聞いている。
相槌が入るので、寝ているのではないと判る。
わたしも、シートを倒して少しリラックスし、話し続ける。

混濁していた頭の中が、整然としてくる。
元夫に対して蟠っていた感情が、輪郭を持ち始める。
わたしが、元夫に対して抱いていたのは、強烈な怒りの感情だった。

元夫の会社の経営が傾いた原因は、まだわたしが在籍していた頃に、このままではいけないと指摘していた箇所ばかりだった。
指摘する度に、「お前にはどうせ解らんのだから、黙って俺の言う事を聞いておけ」と言われ、悔しい思いをしていた。
そして、何よりも…。
元夫の経営していた会社は、そもそも、わたしが立ち上げた会社だった。
元夫も、ブレインとして参加してはいたけれども、それでも、わたしが創った、わたしの会社だと、わたしは考えていた。
わたしが創り、必死に育て、ようやく会社組織として軌道に乗り始めた時、代表取締役を元夫に明け渡したのは、わたしの意志ではあった。
代表者として人前に露出する事が増え、それはわたしにとって苦痛になっていたからだった。
元夫は、わたしの経営理念に、賛同してくれていると思っていた。
まさか「お前のやってたのは会社ごっこ。口を出すな。」と嘲笑され、全く違う経営方針の会社にされるとは、夢にも思わなかった。
その結果、どうだろう。
見事に会社が破綻しているではないか。
せめて、わたしが問題に気付いた時点で、なんらかの対策をしていてくれれば…と、悔しくて悔しくて、しょうがなかった。

その感情に気付いた時、わたしは、涙を流していた。

  悔しい…すっごい、悔しい…。

すすり泣くわたしに、Sが言う。

  そりゃ悔しいよなぁ、うん…。

この時、はっきり解った。
わたしの中には、借金を抱えながら元夫とやり直す気持ちなど、無かった。
夫婦なら、そうすべきだとは思う。
けれどもわたしは、夫として以前に、会社経営者として既に、元夫を軽蔑していた。
そんな気持ちを無視したまま、夫婦生活の維持など、最早到底不可能だ。

離婚を、受け入れよう。
そう、決意した。

その時、暗闇の中、Sの手が伸びて来た。
乳房を掴まれる。
わたしの呼吸が、嗚咽が、止まる。
Sの指が動いて、乳房を揉みしだく。
以前とは違い、その手には力が感じられた。
そうっと漏らしたわたしの溜め息は、Sの耳に官能的に響いたと思う。
Sは、わたしの着ていたカットソーを捲り上げ、その下に手を差し込んだ。
直後、「あ」と声を上げて、手を引っ込める。
おそらく、素肌が触れると思っていたのだろう。
しかしわたしは、下にキャミソールを着ていた。
予想に反した布の手触りに、意表を突かれたと同時に、理性も復活したのに違いない。
がたん、と音を立てて、助手席のシートが起き上がった。

  帰るわ。

  え…。

わたしも、シートを起こす。

  ここで、いいの?

  ああ、もう歩いてすぐだから。

  そう…あの…今日は、どうもありがと。

  いやいや。
  んじゃ、またな。
  気を付けて帰れよ。


Sは、素早く車を降りて、歩き出した。
わたしは、涙を拭いながら、後姿を眺める。
Sの背中から、その心情を、読み取ろうとする。
疲労している様にも、満足している様にも見えた。
Sの姿が完全に見えなくなるのを待たず、わたしは、車のエンジンを始動させた。





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